― 若宮さんから私たちへ ―
2022年 9月 9日(札幌)一社 北海道消費者協会 主催
デジタルクリエーター・ICTエバンジェリスト【若宮 正子 氏】
若宮さんは北欧デンマークも訪問。この国は世界で2番目に「幸福度」が高く、いちばん「国民税金負担率」が高い国で「電子政府」が確立されています。ここでも若宮さんは「高齢者はデジタル化についていけるのか?」を調査されています。
《電子社会》を生み出したデンマーク政府の「きめ細かい」配慮に触れ「日本で電子政府になると、いいことあるのか?」「なぜ日本のデジタル化は遅れてしまったか?」などを語られます。
2022.6月 若宮さんはデンマークへ。「国の良さを図る物差しはGDPであるという時代《金儲け力の高い国が強い国》それが「いい国」と言う時代が長く続いてきたところ、最近は国民目線で「幸福度の高い国」が注目されてきている」と言われます。
その《幸福度》は「フィンランド」「デンマーク」など北欧の国が上位を占め、なぜかそれらの国は「国民のITリテラシーの高い国」だと言います。そのなかで若宮さんは「IT弱者がいない国」と言われるデンマークの実情が知りたいと思うようになったと。
デンマークは「役所と国民の間に《紙の文書》郵送を一切やめて《オンライン》のやり取りに限定している国」と言われており、そうしたさまざまな謎解きのためにデンマークと言う国に行ってみたくなったのだそうです。
国連が発表した「世界幸福度ランキング2020」デンマークは世界第2位です。(日本は62位とG7で最下位:左図)そして若宮さんは《テクノロジー》に対するデンマークの視点に注目されます。
日本ではテクノロジーは企業の《利益率向上》のため主に活用されますが、デンマークは先進技術による《仕事の高度化》に重きを置いており、これにより従前の《週5日制/8時間労働》に対して《水曜日/午後2時終了》という社会システムを構築しているとのこと。
若宮さんはおっしゃいます。「国民は新たにできた時間で音楽や手芸など好きなことに打ち込み、幸福度を上げると同時に自分を《バージョンアップ》できます。国を挙げて《部活》をしているんです。それがひいては《国の発展》につながっていくんだと思います」
若宮さん曰く「デンマークは太陽が出る時間が短く暗くて長い冬、お店の閉店時間も早く遊べる場所も少ないところ。高い税金。なぜこの国の国民の幸福度が世界一なのでしょうか」と。
外務省の基礎データなどによると、
この国は《出産費・医療費・大学卒業までの養育費・介護費》が基本「無料」の社会保障を誇り、高福祉を実現する財源は国民が払う《税金》のため、実質《国民税金負担率》は世界一と言われます。
給与から《所得税・雇用保険・医療保険》などを差引くと手取りは「額面の5割~7割程度」に。さらに日本の消費税にあたる「付加価値税」が25%「自動車税」は150%、収入の半分近くが税金でも、無料の医療費は予算削減の方向で《超高齢社会》は財政難のようです。
しかしながら、若宮さんは「コロナ禍やウクライナ情勢もあり経済的に苦しいのはどこの国も同じ。その中で《高福祉》を維持していくために国家も国民も頑張っています」と《所得格差の少ない》デンマークの間近で見てきた現状を伝えてくださいました。
この国の《電子政府》ルールは国民は毎日インターネットにある「役所のメールボックス」へアクセスし《通知・お知らせ》などを見て、必要な処理をしなくてはならないと言います。(上左図)
いわば《デジタル郵便受け》が国と国民をつないでいる状態(上中央図)で、そのため15歳以上のすべての国民は「1日1回以上」この郵便受けにアクセスする「義務」があり(上右図)場合によっては「罰則」も。
若宮さんは「高齢者は通常の処理は出来ても、例えば制度改正による大きな変更には、ついていけない人や不安な人もいる」と言い「そういう人のために《練習室》を作り、そこで体験してから本番に臨むことができる、きめ細かい対応を」とおっしゃいます。
「どうしても難しい」という人については、
デンマークには実際の利用シーンを体験できる《デモ環境:図》の提供があるほか、教材の開発等をデジタル化庁が担当し、ITカフェ等での教育に利用されているそうです。
パソコンが用意された「練習室」は足元の暖房も完備。出来る限り人の手を借りずシニア自身が対応できるようにとの配慮が窺われ《自立を尊ぶ》デンマークの国民性が感じられます。
また《スワイプ》などの「画面上を指で滑らす操作」をするスマホアプリは国が禁止。こうした操作はコツのほか手指が乾燥した高齢者には難しいと、若宮さんは過日Apple社のティム・クックCEOにも説明されています。
さらにこの国には会員数25万人などの大きな「高齢者団体」が複数あり、そうした老人クラブ連合会も高齢者を支援。高齢者の代表として提案・権利向上のための政治的活動はもとより、高齢者にスキル向上のためのサービスも提供しているそうです。
若宮さんは、デンマークの国民性を次のように言われています。
自立を尊ぶ=「極力本人にさせること」(酸素吸入が必要な状態でも)だとか。なので可能な限りすべて《調節可能》になっているのだそうです。
「デンマークの例から私たちが学べることは、電子政府を進めるに当たっては、必ずしもその国に《高度な技術を開発する力》が求められるわけではない、ということです」
「その代わりにデンマークが持っているのは、国民の個人データを扱う政府への信頼感、そして他人のデータを盗んで悪用しないであろうという社会への信頼感です」と若宮さんはおっしゃいます。
そうした根拠ともなる「電子政府発達度指数ランキング」と「人は信頼できると思う人の割合」はデンマークは共に第1位であり、日本はそれぞれ14位と24位となっているようです。
デンマーク政府によれば、国の《電子政府化》は経費削減の大きな成果を生み出していると言われます。
高齢者が多くても、こうした仕組みが機能するキーワードに「信頼」「協力」「社会への貢献意識」などがあるとか。また現状を《支える人たち》の存在についても若宮さんは伝えています。
デンマークは「キャッシュレス」も進んでいます。例えば駅のトイレ(有料)も、乗車券や指定券の購入もスマホで。もちろんキャッシュも使用可能と言います。
日本も2023.4月から「デジタル賃金」が始まり、バスや新幹線の乗車券などもスマホで購入するようになるなど、社会のキャッシュレス化は進みます。いずれは駅の券売機や窓口なども減少し、電子社会による経費削減と労働力不足への対策がさまざまに行われていくと思われます。
デンマークの「政府や国民相互の信頼」について若宮さんは何度も伝えられています。国の施策を「国民全員で支え合う」ことが、この国の電子社会を実現する最大の原動力なのかもしれません。
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