知っていきたいデジタルリテラシー【講演を学ぶ-2】

― 若宮さんから私たちへ ―


第59回「北海道消費者大会」~第2章


 2022年 9月 9日(札幌)一社 北海道消費者協会 主催

デジタルクリエーター・ICTエバンジェリスト【若宮 正子 氏】

  • 誰ひとり取り残さない、ひとに優しいデジタル改革をめざして


《基調講演》~第2章の概要


「エストニアのシニアは、なぜ電子国家を受け入れたか?」疑問深まる若宮さんに運命的な出会いが訪れます。そしてエストニア元大統領の言葉と一冊の本をきっかけに北欧へ。現地で知ったエストニアのシニアが電子政府を受け入れた理由は、予想以上のものだったそうです。


電子国家成功のカギは「銀行」と連携したこと


エストニア元大統領ヘンドリック氏
エストニア元大統領ヘンドリック氏

MasterCard主催の「innovation Forum」への参加がきかっけと言われます。この催しは(中南米などで)「ITリテラシーをもっと上げるにはどうするか」についてのイベント。

 

フォーラムの基調講演をされたエストニア元大統領ヘンドリック氏が講演の中でエストニアの電子政府化の成功のカギは銀行を口説いたこと。そのおかげである」と言われたそうです。

 

若宮さんはその時点では意味がよく分からなかったけれど「これは何かあるのではないか」と思い、エストニアに関心を抱いていたあるとき、偶然目に入った一冊の本の帯を見てすぐに本を読まれたと言われます。


若宮さんが出会った「本」とは?


ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来 

「僕らの未来をダントツに面白くする”ひみつ道具”はここにあった」(著)小島健志(監修)孫 泰蔵(2018)

 

閉塞感漂う日本の課題解決のヒントは、未来をダントツに先取りしているエストニアにあった!

  • 《機械に仕事を奪われても》食べていくにはどうするのか?
  • 《優秀な人材》を世界から集めるにはどうするのか?
  • 《都市と地方の格差》を埋めるにはどうするのか?
  • 《Googleやアップルのような企業》をどうやって生めばよいのか?
  • 《プログラミング教育》はどう行えばよいのか? (以上書籍紹介より)

そして「本」を読み終えて


若宮さんが現地で行った「6つ」のこと
若宮さんが現地で行った「6つ」のこと

本を読み「どうしてそういうことになったか」という背景が少しずつ分かると「もう、これは現地に行くしかない」と若宮さんはポケットマネーでエストニアへ。

 

現地には孫氏が開設のVIVISTOPという施設があり、そのプロジェクトの支援のおかげで初訪のエストニアで活動ができたことから真相もだいぶ分かってきたそうです。若宮さんが現地で行った「6つのこと」とは、

  1. 電子政府のショールーム「見学」
  2. 現地シニアに「アンケート」実施
  3. エストニアの「デジタルID」取得
  4. 「シニアと孫」世代へ《Excelアート》ワークショップ開催
  5. 中年世代へ「トークショウ」実施
  6. タリン大学工学部「卒業式」参列

問題意識を持たず「受け身」で訪れる日本人?


エストニアは電子政府のショールームがあり、外国からの「エストニア詣で」があるそうです。どの国も「ノウハウを教わりに」もちろん日本からも。

 

若宮さんが「日本から来た」というと「日本か…」と嫌な顔。そのうえ「また来た」みたいなことを言われ「なんで嫌な顔をされるんだろう?」と思ったところ、日本からのお客は他の海外の人とは違うらしいことが判明したそうです。

 

ショールームを訪れる海外の人たちは自分の問題意識をしっかり持っていて「何がどういうふうに結びついているか?」とか「X-Roadというセキュリティシステムをもう少し詳しく知りたい」とか、自身のテーマを持って来られる方が多いのだそうです。


質問の「的を絞る」という大切さ


日本は視察団的な人が多いらしく「何を聞きに来たんですか?」と聞くと「はあ…」と言われ「何をお話してほしいですか?」と聞くとまた「はあ…」となるとか。

 

「視察団の日程の中に組み込まれていて、外で待っていても寒いから来た」みたいな方や、ある方に言わせると議員先生の活動状況を地元有権者へ宣伝するため、政府高官にお願いして2ショット撮影しブログ掲載なども。

 

若宮さんは「まさかそんなことはないと思うんですけれどね」とおっしゃいましたが、結論は「日本人はあまり的を絞れず、何を聞きに来たのか分からない人が多い」のが実状とのことでした。


エストニアのシニアが電子政府を受け入れた理由


若宮さんは電子政府の方に「私の聞きたいことは~ということだ」と伝えたところ「それなら分かったから、それに答えます」と言われ「なぜエストニアのシニアは協力的なのか?」と聞くと「我が国の高齢者は今の電子政府に満足しているとの返事が。

 

そしてユーザビリティにとことんこだわった「操作手順がわからなくなることがないようにした。ましてやトリセツ(取扱説明書)がなければいけないとか、コールセンターがなければ出来ないというようなものを作るのは恥だ」と言われたそうです。

 

最後は「官民の壁を取り払った」こと。役所のためのものではなく、常に使う側の立場でもって「こういうときに、どういう画面が欲しいか」などを考えて作ったことを聞いた若宮さんは「シニア自身が電子政府をどう見ているか」ぜひ知りたいと思われたそうです。


結果は予想以上のものに


現地で実施したアンケート結果は、電子サービスを使う人の93%が「使ってよかった」と前向きだったこと。

  • 今、電子サービスを使っているか? Yes/84
  • デジタル化で幸福度は向上したか? Yes/93

 

さらに「どんなサービスを主に利用か?」の一番が「e-Banking/銀行取引」だったことで「銀行のお偉いさんを口説いて成功に導いた」という言葉の意味がわかったと言われます。

 

《シニアが使う電子サービス》1.銀行取引、2.納税、3.電子署名、4.選挙、5.健康保険

 

銀行も助かる「オンラインバンキング」は「二段階認証」や「ワンタイムパスワード」などが日本の中高年には《浸透し難い》と思われる一方、エストニアは「口座振替」が無いことやキャッシュレスによる支払明細などの確認が必要なことが、銀行利用が突出する一因なのだそうです。



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