知っていきたいデジタルリテラシー【介護DXの実現】

―「DX」研究会 学習会 ―


介護DXを考える~介護業界の現場から


  • 《講師》一原 大剛 氏(いちはら・だいごう)
  • 介護福祉士・認知症ケア専門士
  • 17年間、介護事業所の運営・介護業務に携わる
  • 現在はフリーで介護事業所の財務・労務サポートを中心に活動

介護と「DX」の定義について


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会
デジタルと共に 「DX」研究会:10月学習会

少子高齢化が進み介護業界はさまざまな課題が山積。特に人手不足の問題は深刻。介護サービスの提供側だけでなく受ける側にもデジタル化に対応できる備えが必要では。


そのための手段の一つとして介護DXについて学びます。

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称であり、2004年にスウェーデンの学者が提唱した概念

  • 「IT」で人々の生活を良い方向に変化させる と定義


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

日本では2018年に経産省が以下を定義。(スライド赤字部分は発表者によります)

  • 企業がデータとデジタル技術を活用し
  • 製品・サービス・ビジネスモデルを変革すると同時に
  • 業務そのものや組織・プロセス・企業文化・風土を変革
  • それにより競争上の優位性を確立すること


「介護DX」とデジタル化の現状


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料
デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

介護DXとは主に以下のような取り組みが考えられます。

  • スマホやパソコン、さまざまなデジタルを活用し
  • 業務の効率化を図ることで
  • 利用者や家族に質の高いサービスを提供
  • 介護スタッフにとっては安心して働ける場の提供を行う

一方で現実の介護業界のデジタル化は、総務省によると日本のなかでも最低との評価が。とくに小規模の介護事業所はかなりのアナログ状態



介護DXを進める「理由」


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料
出所:厚労省2021年「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」添付資料より

介護DXを進める理由は介護業界の深刻な人材不足。厚労省は今後の介護スタッフの必要数を試算。

  • 2040年度までに約280万人(2019:約211万人実働)
  • 単純計算で21年間で69万人が不足することに
  • 年間平均では約3万3千人が不足


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世界的にも非常に高い日本の少子高齢化を鑑みても早急な介護スタッフの確保が求められることから、

  • DXによる業務の効率化を図り
  • 働きやすい職場の仕組みづくりを行うことで
  • 介護職の魅力を高め人材の確保を目指す


さらに相乗効果として以下を想定。

  • 人手不足の解消による介護サービスの質向上
  • 災害時の迅速な対応の実現

DX導入への「課題」


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

しかしながら介護DXを実現するためには現状の課題も。

  • デジタル環境の整備・維持管理コストの負担
  • 介護利用者・スタッフのデジタルへの心理的抵抗感
  • 個人情報の漏洩リスク


上記課題の対応策としては、

  • 様々な補助金制度の有効活用
  • デジタルへの利用者の方と介護スタッフの理解促進
  • セキュリティー対策による情報漏洩管理など

もし「介護DX」が進まなければ?


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

課題が解消できない場合、私たちの生活に与える影響は、

  • 医療や介護の必要なサービスレベルの低下
  • 医療費・介護給付費のさらなる増加から
  • 医療保険や介護保険の自己負担増につながる可能性


具体的には人材が確保できないことから介護事業者側は、

  • 事業者として提供し得るサービスの限界
  • それにより提供するサービスの質低下
  • 現状抱えるさまざまな問題はさらに解決困難な状況

対して少子高齢化は確実に進むことで私たちサービスを受ける側は、

  • 介護の担い手と社会保険料の支え手は減少の一途をたどり、
  • その一方で要介護者は増加するという悪循環に陥った場合、
  • 更なる介護離職の誘発や医療・介護保険料の自己負担増の要因ともなり、
  • 結果として国民全体の生活レベルの低下を招く恐れも

デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料
出所:「2040年を見据えた社会保障の将来見通し・議論の素材」財務省他2018年
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同上

財務省は介護保険費用保険料負担の推移・見通しを推計

  • 制度開始の2000年と2021年を比較すると
  • 介護保険費用は当初3.6兆円→12.8兆円と4倍
  • 介護保険料は月額2,911円→5,869円となり2倍に推移

介護保険料の今後の月額見通しは、

  • 65歳以上の1号保険料は
  • 2018年→5,900円、2025年→7,200円、2040年→9,200
  • 40歳~64歳以下の2号保険料は
  • 2018年→2,800円、2025年→3,500円、2040年→4,400円へ


介護DXの「事例」と「今後」について


デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

介護現場では種々の事例や導入が試みられていますが音声認識や回線状況など今後のデジタル技術の向上が待たれる側面や介護ロボットの開発など実用化にはまだ課題が多い分野も。



デジタルと共に「DX」研究会:10月学習会資料

しかしながらDXには事前のデジタル化も必須。まずは利用可能なデジタル技術の活用から課題を整理しつつ、着実にDXへの準備を進めることが、この先のデジタルの豊かさの享受へつながるのではと考えます。