知っていきたいデジタルリテラシー【SNSの未来】

―「DX」研究会 学習会 ―


「SNS」の歴史と未来


  • 《講師》俵屋 年彦 氏(たわらや・としひこ)
  • ボランティア団体  VRアートを楽しむ会・創設者
  • アートとテクノロジーの民主化を促進する TAWA LAB 運営
  • コミュニティFM三角山放送局で26年間パーソナリティーを継続中
  • NPO法人 さっぽろ自由学校「遊」で理事と講師

「SNS」とは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス


4月定例会資料
学習会の様子

【SNSの基本は人のつながり】インターネットは人をつなぐ。

インターネットは個々人を網の目のようにつないでいく。インターネット体験を通じて、世界は元から網の目のようにつながっていることを学ぶ。現代のSNSの問題点は大きく分けて《分断》と《誘導》。インターネットの歴史を振り返りSNSを位置付ける。


「Web 1.0」 (1995年~)


4月定例会資料

【単一方向 網の目状に個々がつながる】さまざまなサーバーで各自がホームページ(以下HP)を開設し情報を公開。《掲示板》や《メール》で情報交換。HPを制作するHTMLの知識が必要だった。

 

当初はYahooなどに《自分で登録》してHPを周知。やがて《自動で登録》されるように。Googleの登場で情報収集は「検索」で行うようになる。人が介在しなくなっていった。玉石混合の《膨大な情報》が公開され、必要な情報を探すには時間がかかるようになった。


「Web 2.0」 (2005年~)


【双方向 中央集権的なプラットフォーム】企業がプラットフォームを設け《ブログサービス》を開始。無料登録でき、簡単に情報発信できるFacebook、Twitterなどの《SNS》が誕生。スマートフォンの普及で膨大な量の情報が発信。テキスト→写真→現在は動画中心に。インターネット回線の《安定化と迅速化》が背景にある。

 

セカンドライフは、2006年SNSとして日本に紹介されたが盛り上がりにかけたのでTwitterが導入された。短いテキストが瞬時に伝わり、拡散していくダイナミズムに感動。人々が共に生きている息づかいを感じた。様々なSNSのサービスが始まった。 


「SNS」の普及と炎上


【人間の承認欲求】SNSの普及と炎上を考えると人間の《承認欲求》に行き当たる。承認欲求は《自己実現》を目指す前向きなものと《注目》されたいだけという後向きなもの、の両面がある。

 

 


【心理学者アブラハム・マズローが提唱】人間の基本的欲求を5段階に分類

  1. 生理的欲求:食事や睡眠など
  2. 安全欲求:安全に暮らす欲求
  3. 社会的欲求:集団に属する、愛情を受ける
  4. 承認欲求他者から認められたい
  5. 自己実現欲求自分の力を最大限発揮する

SNSは利便性が高くユーザーが急増。GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などに情報が集約し個人情報や個人の趣味嗜好、行動履歴を特定企業が独占している。


世界最大級のプライバシー事件=「ケンブリッジ・アナリティカ問題」


5月定例会資料

【性格特性の予測】米国の大統領選挙、英国のブレグジットを裏で操っていた企業が存在した。その名はケンブリッジ・アナリティカ社(CA社)。CA社とSCLエレクションズ社は2013年の暮れから2014年初めの時期にケンブリッジ大学計量心理学センターの研究に注目していた。

 

その研究はFacebookの個人情報、特に「いいね」を利用することで、個人の《性格特性》を予測できるというものだった。GSR社とSCLエレクションズ社は、Facebookに登録していたアプリケーションGSRAppを用いて《ユーザーデータ》の収集に努めた。


【データによる行動の変容】2015年12月、FacebookはコーガンとSCLエレクションズ社に対し、保有しているFacebookデータを全て削除するよう要求。コーガン氏とSCLエレクションズ社はそれを保証したが、CA社は削除せずにデータを利用して《選挙コンサルティング》を実施した。

 

CA社はFacebookデータなどの《個人情報》を利用することで、米国の大統領選挙でトランプを当選させ、ブレグジットを引き起こした。特定のターゲットにメッセージや広告を送ることで、そのターゲットの行動を変容させることに成功した。


  • TEDトーク「ブレグジットにおけるFacebookの役割と民主主義への脅威」

▶https://www.ted.com/talks/carole_cadwalladr_facebook_s_role_in_brexit_and_the_threat_to_democracy?language=ja

 

ジャーナリストのキャロル・キャドウォラダーが、最も不審な近年のニュースを掘り下げた見逃せないTEDトーク。2016年、イギリスでの国民投票で僅差の末に欧州連合(EU)を離脱することが決定された。このニュースを巡って浮かび上がったのは、誤解を招くようなFacebookの広告が、無防備なブレグジットの《浮動層をターゲットに大量投下されていたという事実。


「SNS」と「フェイクニュース」


4月定例会資料

「フェイクニュースを科学する: 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ」笹原和俊著 2021年

 

「二〇一六年以降、噓やデマ、陰謀論やプロパガンダ、こうした虚偽情報がソーシャルメディアを介して大規模に拡散し、現実世界に混乱や悲劇をもたらす事象が次々と発生しています。

 

「フェイクニュース」と呼ばれている、これらの一連の現象は人間とデジタルテクノロジーの相互作用が生み出す複雑な現象であり、私たちの日常生活や民主主義を脅かす深刻な社会問題です。フェイクニュースはなぜ生まれ、どのようにして拡散し、われわれ人類の脅威となるのでしょうか。その仕組みを理解することは、情報と虚偽情報が混在する複雑化社会を生きていくうえで重要です。」


「本書ではフェイクニュース現象を、情報の生産者と消費者がさまざまな利害関係の中でデジタルテクノロジーによって複雑につながりあったネットワーク、つまり、「情報生態系(Information Ecosystem)」の問題として捉え、その仕組みについて紐解いていきます。

  

その目的を達成するために、伝統的な社会科学だけでなく、計算社会科学という新しい学際科学の知見を取り入れながら、できるだけ平易な言葉でフェイクニュースに関わる科学の重要な要素とそれらの関係を解説しました。」


あらゆる情報が信用できなくなる「未来」


5月定例会資料

【インフォカリプス(情報の終焉)】今ツイッターやフェイスブックなどのSNS(交流サイト)で目にしているニュースは真実なのか? 単なる誤報か、誰かの嘘か、或いは意図的に操作された情報なのか? 

 

ミシガン大学のアビーブ・オバディアは、虚偽が溢れ、あらゆる情報が信じられなくなる未来をインフォカリプス(情報の終焉)と表現した。その避けたい未来はいくつかの段階を経て、杞憂とは言い切れない状況になってきている。


自分の意見は「多数派」か?


4月定例会資料

【エコーチェンバー】SNSにおいて自分と似た価値観や興味関心をもつ人とばかりつながり、同じような情報ばかりが流通する《閉鎖的な情報環境》ができてしまう。

 

このような、同じ「声」がこだまする環境エコーチェンバーというエコーチェンバーは様々なSNSでその存在が確認されており、偽ニュースの温床となったりヘイトを増幅させたりし《意見対立》や《社会的分断》を加速させる可能性がある。


自分の知りたい「情報」だけ?


4月定例会資料

【フィルターバブル】情報環境で生じるもうひとつの問題がフィルターバブルである。フィルターバブルとはユーザの個人情報を学習した《アルゴリズム》により、その人にとって《興味関心》がありそうな情報ばかりがやってくる環境。

 

検索、オンライン広告、SNSのニュースフィードなど、多くの《オンラインサービス》に、このような情報のフィルターが埋め込まれている。


かつて期待された「自由」な発信の場、「インターネット」


4月定例会資料

「遅いインターネット」宇野常寛著 2023年4月

「今日において明白なのはソーシャルメディアによる「動員の革命」とは、ポピュリズムの一形態に過ぎないということだ。その動員力はテレビのそれよりも弱い。しかし、よりアクティブで熱狂的な参加者がそこには集う。

 

この局所的な熱量の高さ、瞬間最大風速の強さは、それがより一過性の狂躁であることを意味していた。」「それはテレビのそれよりも、より短期で、そして熱量の高い分冷めやすく、思慮を欠いたポピュリズムに過ぎなかったのだ。

 

テレビポピュリズムにインターネットポピュリズムで対抗するという「動員の革命」はこうして敗北していった。いや、それどころか平成というポピュリズムの時代を下支えし、強化したのだ。」


【遅いインターネット宣言】現在のインターネットは、人間を「考えさせない」ための道具になっています。かつて、もっとも自由な発信の場として期待されていたこの場所は、いまとなっては最も不自由な場となっています。

そこで私たちは一つの運動をはじめます。いまのインターネットは「速すぎる」。


「Web 3.0」とは


【分散型インターネット・ブロックチェーン技術が基盤】Web2.0では特定の巨大企業(GoogleやAmazon、Facebookなど)が個人情報や利益を独占している。Web3.0は《ブロックチェーン技術》が基盤。特定企業や管理者に依存せず、個人に関連するデータを自分自身で管理できる。

 

Web3.0では、データやサービスがネットワークの参加者間で共有され《権限》が集中しない(非中央集権化)。取引データはブロックにまとめられ、改ざんが困難な《透明性の高いデータ》として確定される(相互検証可能な透明性)。


新しい分散型SNS「Bluesky」


4月定例会資料

Bluesky(ブルースカイ)は、2019年に発表されたTwitter(現X)の共同創業者、ジャック・ドーシーらが発案した新たな《分散型SNS》プロジェクト。

 

従来の中央集権型SNSとは異なり《複数のサーバー》が連携してユーザーデータやコンテンツを分散して保存するソーシャルメディアプラットフォーム。2024年2月6日、従来の招待制を廃止し、誰でも登録可能になった。


4月定例会資料

【AT Protocolがコア技術】AT Protocol(ATプロトコル)は《ブロックチェーン技術》と連携することで、分散型アプリケーション(DApps)の開発を促進。

 

この連携によりアプリケーションは《分散型ネットワーク》上で安全にデータを交換し、ユーザーの《プライバシー》を保護しながらサービスを提供することが可能になる。

 

Blueskyは、X(旧Twitter)などの「一社がサーバーを管理するもの」ではなく、誰もが自由にサーバーを管理し、運営企業がつぶれても《投稿内容》や《人間関係》を維持したまま、別のSNSへ移行できる《エコシステム》の構築を目指している。


Blueskyは、誰もが「セルフホスト」


4月定例会資料

【Blueskyの分散型ネットワーク】2024年2月22日、サーバー分散化の第一歩として、ユーザーが独自のデータをホストできるようにするための《Federation機能》を公開した。

 

「いいね」やフォロー・フォロワー情報を保存・管理できるBluesky PDS(Personal Data Server)を誰でもセルフホストしてBlueskyの分散型ネットワークに参加できるようになった。

 

独自のサーバー、或いは別の団体が構築したサーバーに情報を保存してもBlueskyで得られる体験は変わらない。情報が何度移動されようと投稿内容やその他の情報は常に同じものが表示される。


「物理世界」と「仮想世界」の連携と循環


4月定例会資料

「Web 3.0」を基本として Web 2.0、Web 1.0も共存する未来

 

【SNSと空間コンピュータ】メタバースが日常になる。AppleのVision Proが普及すると、本格的にコンピュータ環境が《空間的》になる。コミュニケーションもリアル体験と近くなる。

 

【人工知能とSNS】SNSのデータで人工知能は学習した SNSの情報ビッグデータを分析する。投稿内容から事故やトラブルを発見する。個別ユーザー分析・予測・誘導する。人のように気ままに柔軟に話す相手となる。


「Web 3.0」が生み出すものとは、


4月定例会資料

【Web3.0を支える技術とともに】Web3.0は、ブロックチェーン技術とともにインターネットの次世代基盤《IOWN》というゲームチェンジ(低電力・大容量・低遅延)が支える。

 

私は、様々な壁を越えて交流できる《アート共創》の可能性に注目している。